不名誉な緋色の文字Aを胸に付けて生活するというへスター・プリンという、想像しろと言われても全く実感できないような雰囲気から物語は始まった。胸に同じ緋色のAを持つディムズデイル師の登場は、読者である僕が名乗り出ない人物への怒りを持続するには遅すぎた。へスターにしろディムズデイルただ単に悲劇の人のような印象を受けながら話が結末へとつながってしまった感じだった。解説の解釈もあるだろうが、きっとホーソーンはただ単に悲劇を描きたかったのではないと思うのは当然だろう。しかし自分が読後ただ悲劇のように感じただけだったのは、勿論テーマが重すぎないようにと言う作者の配慮だとは思うが、なんだか悔しいような感じがした。
 この物語でディムズデイルがパールを見て自分に似ていると思うシーンで、ディムズデイルはそれを嬉しいと思うのではなくて恐怖と感じるところが、当然の感情なのだろうけど、妙に印象に残った。