昔から計算機の世界では、より多くの文字を処理できるようにと言う努力が行われてきました。実際にワープロソフトなどを使っていて、人名などの必要な漢字が文字セットに含まれていないために、新字体で表したり、平仮名で表したりしたことはないでしょうか。そういった問題を解決するために、計算機で用いる文字セットは拡張が繰り返されてきました。10数年前のパソコンの世界では漢字が表示できると言うこと自体がすごいことだったのですが今のコンピュータではそれは当たり前のことになりました。昔のパソコンは記憶容量が少い為に、多くの漢字を保存できなかったからです。しかし今のパソコンは極めて多くの文字を保存するだけの記憶容量があります。が、なぜか未だに表示できない文字が多数あります。それは何故なのでしょうか。その問題の根は計算機の記憶容量ではなさそうです。
 それでは今度は、漢字から離れて文字全般を見渡してみましょう。どんな文字があるでしょうか。平仮名・片仮名・漢字・アルファベット・数字・ハングル・象形文字・くさび文字・ヒエログリフ・絵文字・(SF映画「スタートレック」の)クリンゴン文字・のりぴー文字....と、実に多くの種類の文字があると想像できるかと想います。その上、新しい文字は次々と生まれています。遺跡を発掘すれば新しく文字が発見されるかもしれませんし、日々絵文字を作っている女子高生たちは文字セットの拡張を待ってはくれません、文字を習っている外国人や子供たちは次々と新しい誤字を作っていくことでしょう。そういった文字をコンピュータで表示できる必要があるのかどうか疑問に思う人もいるかもしれませんが、表現できる文字とできない文字があると言うことは、コンピュータネットワーク上で流通させることができる情報とできない情報が存在すると言うことになります。そのように情報漏れが存在すると言う事実はネットワークの価値を下げてしまいます。端的に言うと、コンピュータネットワークは永久に本やノートを越えられないと言うことになります。技術やインフラの整備によって、やっと実用的になってきた世界がこんな簡単に限界を見せてしまって良いのでしょうか。
 文字セットが全ての文字を網羅できない最大の理由は、もうおわかりでしょう。文字が無限に存在するからです。そこで私が提案したいのは、文字を文字セットと言う枠に収めようとせずに、文字も情報と同じように、ネットワーク上に配置してはいかがでしょうか。そうすれば新しい文字を作った人や使いたい人は、その文字をネットワーク上に公開することで、それを使うことができます。もちろんそういった方法を実現するためには、様々な問題があるとは思いますが、文字セットの問題は今までのようにセットにまとめて行くばかりでは、新しい文字に対応しきれないと思うのです。今回は少しばかり堅苦しい話になってしまいましたね。最後に一言「誤字だって文字です」...それではまた。