ハンスという名の模範的な少年と、ハイルナーという名の詩人である少年の二人にヘッセの像が写されていると言うことは読んでいて何となくわかった。人はいろいろな側面を持つから、二人の少年にヘッセを投影することはごく自然なことだと思った。僕はどちらかというとハイルナーの方に感情移入しやすいように感じて読み進めていた。しかし結末に近づき、ハンスがエンマに恋し、苦悩した。その後、機械工達と飲みに出かけて、別に恋の話を語り合った訳じゃなさそうだが、楽しそうに死んでしまったところで、人の死を美化するのはどうかという疑問もあろうが、妙に安らげたように思う。微笑みながら死んでいくと言うことも、ハンスの神学校のレールからはずれ、戸惑いのようなものしか残さなかったところから、「お疲れさま」と一声かけてあげたいように思った。
 解説でヘッセの生涯があったが、ヘッセもハンス同様神学校のレールからはみ出したわけだが、神学校にいた時代の出来事や環境が後の創作に生かされていることをみても、必ずしも過当な教育を悪いと断定しなくても良いように僕は思う。