宝島社「このミス」大賞の『四日間の奇跡』という作品の著者、朝倉卓弥氏の作品。前作がたいへん読みやすい作品だったので、この本も読んでみることにした。この作品は平家物語をベースとした創作小説だが、物語の冒頭は平安時代でなく現代から始まる。現代の世に生きる白石友恵と原口武蔵がタイムスリップし、その後は平安末期の世界で生きていく。
 上巻を読んだ時点での感想は、臨場感溢れる表現で描かれていて物語の登場人物に感情を傾けることが出来たと言う点。特に、読者に最も近い立場で元々は現代を生きていたはずの、タイムスリップした2人が平安末期の時代を生きる自分を自分として受け入れている過程には、臨場感を感じさせられた。それ以外で、僕が最も印象に残った部分は、盛遠と袈裟の物語、平清盛が苦悩するシーンだろうか。下巻を読み進めるのが楽しみな作品だ。