ヤマト運輸の元社長でクロネコヤマトの宅急便の生みの親である小倉昌男氏の著書。開始当時は採算がとれないと言われた宅配便事業に取り組んだ。単なるバクチでは無く、将来的に損益分岐点を超え利益を出せると言う見通しや、一般家庭の主婦が気軽に宅急便を利用できるための配慮など、宅配便のビジネスを成功させるため様々な取り組みがあったことが記されている。それ以外にも、スキー宅急便・クール宅急便など、宅急便のビジネスの幅を広げるための取り組みについても紹介されている。
 この本では、このようなヤマト運輸のビジネスについて示されているが、書名「経営学」の通り、それぞれのビジネスに対して経営者としてどのような態度で臨んだかと言うことがかかれている。そして、巻末には経営リーダー10の条件と言うものが記されている。論理的思考・時代の風を読む・戦略的思考・攻めの経営・行政に頼らぬ自立の精神・政治家に頼るな、自助努力あるのみ・マスコミとの良い関係・明るい性格・身銭を切ること・高い倫理観。この中の「高い倫理観」で、人間として大事なことは「真ごころ」と「思いやり」だと思っていると言う記述に非常に共感を覚えた。企業は利益を上げるためにビジネスを行っている訳ではなく、利益は企業が存続するための手段、経済活動の結果であるということは、僕の考え方と同じで非常に共感できた。また、「戦略的思考」の中で述べられている「安全第一、営業第二」と言うスローガンは、合理的で従業員にとって理解しやすいものだと感じた。この本で、何でも第一では良くないと言うことが書かれている。僕も仕事をしていて、「これは重要、それは優先、あれは至急」というように指示を出されて、混乱を通り越して怒ってしまうことがある。第一を明確にするために、第二も言うと言うのはうまいやり方だなと感心した。