「パックス・ブリタニカ」「パックス・アメリカーナ」「パックス・ジャポニカ」。世界の戦略商品を抑えた国が英国、米国、日本と移り変わって行った歴史について概観されている。第一次産業革命は英国で、第二次産業革命は米国で起こる。第一次産業革命は中小企業、第二次産業革命は大企業が注目を浴びる。日本が世界の戦略商品を抑えた時代は、多品種中量生産に対応することがキーとなった時代。多品種中量生産は、顧客のニーズにあった生産を行うことが必要になった時代で、トヨタ自動車が例に挙げられている。
 「パックス・ジャポニカ」の時代以降には、国を超えた国際競争の時代に突入していき、日本企業の凋落が顕著にあわれてくる。この本ではその原因の一つを、日本企業が得意とする特許分野について見ている。日本企業は製品の製法に関する特許は得意だが、製品自身についての特許、発明は得意としない。特にソフトウェアの分野では製法はあまり問題にならず、製品自身の特許・権利が企業の競争の源泉になるという見方をしている。僕自身、ソフトウェアの専門家から見ると必ずしもこの見方には同意できない。この本が記された時代にはソフトウェアの品質が問題になることがあまり多くなかったのかも知れないが、ソフトウェアの製法は世界的に見てもまだまだ発展途上で未熟であり、ソフトウェアの製法に戦略的に取り組むことで(品質・価格の両面で)企業が競争力を発揮することはできる。ソフトウェアの製品自身の権利が有力であった時代もあったが、むしろ現在はソフトウェア品質と価格競争力に焦点が移っている。また、このような分野は日本企業が得意とする分野でもあり、現在は日本企業にとって大きなチャンスなのではないかとさえ思う。