経営書の古典として有名なピーター・F・ドラッカーの「現代の経営」。原題は「The Practice of Management」で「マネジメントの実践」となる。原題の通り、�T部「事業をマネジメントする」ではシアーズ物語、�U部「経営管理者をマネジメントする」ではフォード物語という、事実から経営の実践を知る試みがなされている。シアーズ物語では、アメリカの農民向けのビジネスを展開していたが、ライフスタイルが変化した為イノベーションが必要となったという物語。フォード物語は、経営管理者抜きで全ての経営判断をヘンリー・フォード一人で実施していたところ、経営が行き詰まってしまったので、事業部制に再編して再び成長を続ける事ができたという物語。どちらの物語も、事業・経営管理者のマネジメントの必要性を認識するための物語で、各部の導入としてたいへんわかりやすい。
 この本の中で取り上げられていた数々の問題の中で、「キャンペーンによるマネジメント」と「CEO一人体制の危険」の問題について特に関心を持った。「キャンペーンによるマネジメント」では、経費削減キャンペーンなどを実施して経営の効率化を図ろうという手法は無意味であるという事。そのようなキャンペーンを実施したところで3週間もすれば元に戻ってしまい、当座しのぎにしかならない。そのようなマネジメントではなく、事業の目標を明確にして、それぞれの目標感のバランスをとっていくというマネジメントが必要であるということが示されている。この点に関しては、目標を見失って意味不明なキャンペーンを打ち出している企業は実際にたくさんあるだろうなという印象を持った。このような古典の経営書で指摘されている事すら現在の経営者は理解し、実践できていないというのは情けないと思う。
 次に「CEO一人体制の危険」だが、CEOが一人ではその仕事が多すぎるので、CEOはチームで仕事をする必要があるという事。もしもCEOが一人で仕事をしている場合、その仕事を処理することができずに補佐役などに囲まれて仕事をすることになる。補佐役などの側近は、CEOの側近である事によって神秘的な権力を持つが、明確な仕事や責任はない。そのため、いわゆる側近政治が行われ、組織が機能不全に陥るという危険性に繋がるという事を示している。これはCEOの側近以外にも当てはまる事で、明確な仕事や責任が無いにも関わらず権力だけを保持している人が居ると、どんな組織でも機能不全に追いやられてしまう危険性があると思う。