経営学の主に組織論についての解説がめとめられている文庫本。経営学の教授や、実際の経営者である、御手洗冨士夫氏(キヤノン社長)、柳井正氏(ファーストリテイリング社長)などが講義形式で、組織論の様々なテーマの解説を行っている。やさしいと銘打っている割には結構難しい内容ではないかな、と思ったのが私のこの本の第一印象。
 この本では、主に日本の企業の組織について述べられているが、「米国型の組織を目指すことが必ずしも良いことではない」とありきたりのことが述べられている。しかし、この本の記述の中で、年功序列・横並びと言われる日本企業の人事制度は、実際のところは実力主義の競争社会なのであるという記述は新鮮な思いがした。横並びであったとしたら、定年までに社内から社長になる人物が誕生する訳がない、という主張。つまり、経営者を社内から抜擢する日本型の人事制度はきわめて実力主義の要素が強いということなのだ。この記述は一例だが、今まで日本の企業の組織について詳しい記述がされた経営の本を読んだことがなかったので新しい発見の多い読書だった。