映画化・ドラマ化され、以前から流行っている恋愛小説。物語は、「世界の中心で」という大仰なタイトルのわりにはこじんまりとした世界の中で展開していく。
 この作品にしても、直前に読んだ「そのときは彼によろしく」にしても、息子と祖父or父が愛について語り合うシーンが登場する。祖父と愛について語るという場面は、同世代の男同士や男女が語り合う世界とは違う、独特な印象を与えてくれる。それは、息子がその背中をみる祖父or父でもなく、肩を並べる友達という姿でもなく描かれる。恋愛は恋する二人が主人公の物語だということは自明だが、その恋について語り合う、信頼できる誰かがいることというのもとてもすばらしいことではないかということをふと考えてみた。