「世界の中心で、愛をさけぶ」の片山恭一の恋愛小説。主人公を取り囲むありったけの現実とありたっけの非現実が、人を愛する気持ちを糸に結び付けられていく感じ、という物語だろうか。
 もちろん、人を愛することを考えながら物語りは展開していくのだが、タケルという人物の勢いに物語がぐいぐいと引っ張られていく。小難しい感じではなく、次々とめまぐるしく読み進められたという印象だった。読み終えた今、こういうところがこの作品の巧さなんだなと感じる。また、物語を振り返ってみると、タケルという登場人物以外も個性的でありながら、物語の上で重要な意味を持って登場しており、巧いなぁという感想をさらに深めた。
 冒頭で挙げておきながら、まだ読んでいない「世界の中心で、愛をさけぶ」、ぜひ読んでみようと思う。