本文中にも記されている「SEマネージャは正論を語らなければならない」。その言葉のとおり、この本には正論が詰まっている。平たく言えば、当たり前のことが書かれているということだが、読んでみると「なるほど」「それは当然だけど、できていないな」ということがたくさん示されていた。しかし、たいていの人は「それは当然だが、うちはそういう環境ではない」といって逃げてしまうことが多いと思う(もちろんそういう私もその一人なのだろう)。そこを逃げずに正論で生きていくことができれば、納得して仕事ができるんだろうな、と感じた。
 読み物として読み進めるには、後半の「できるSEマネージャの条件」が面白い。周りにいる名刺に「マネージャ」という肩書きが刷り込まれた人を思い浮かべれば楽しみながら読むことができると思う。この本にも書かれているが、「部下は上司をよく見ている」ということで、自分のこと(無能さ)よりは上司のこと(無能さ)の方がよくわかっている証拠なのだろう。
 この本は、正論がきちんと示されていて読む価値の大きい本だとは思うが、50の鉄則と銘打つほど整理されている印象はない。日常の中でついつい忘れてしまう大事なことを常に確認できるように整理されていればいいのにと感じた。読み物としてみたときには、逆に、著者の経験というものも詰まっている感じはしない。ただ正論を並べてあるだけという印象を受けてしまう。よく言えばバランスのいい本かもしれないが、中途半端な印象も否めない。