この本は竹内結子主演映画の原作本なのだが、読んでみてまず最初に香夏子を竹内結子が演じるというのははまり役だなぁと感じた(もちろん映画原作というのを意識して読んだからという面もあるが)。この作品はピアニストと花火職人の恋の物語なのだが、話の長さもバランスよく短めで、挿絵もやさしいタッチで描かれており非常に読みやすい本だという印象を持った。また、健太と香夏子のシーンを交互に組み合わせるという手法も無理なく読み進めることができた。
 天国の本屋という作品はシリーズとなっているようなので、シリーズの他の作品も読んでみたいと思う。ただ一点残念なのは、この作品では「本屋」という要素が十分に生かされていないような感じがした。所々で挿入される本の内容や、健太がピアノの楽しさを思い出すきっかけの要素として本屋の存在があるのだが、本屋であることをタイトルにするほど意味が大きいようにも感じられなかった。そこはシリーズものの苦しい部分かと思った。ちなみに単行本のタイトルは「恋火」で、文庫版にする時に「天国の本屋 恋火」というタイトルになったようだ。