先物取引をテーマにしたミステリーで、ミステリーとして非常に面白い作品だと感じた。物語は、主人公ミゲルの一人称で進んでいくが、彼が出会う人全てと駆け引きを行い、疑い、常に何が真実かを考える。と、同時に読み手である私も、物語の真実の予想を楽しむ。そんなミステリーらしい楽しみ方ができる小説だった。
 この小説、最初は通勤の電車で少しずつ読み進めていたのだが、いまいち面白いと思うことは無かったが、土日を利用して残りを読むと非常に引き込まれて、一気に読み上げてしまった。特に、クライマックスにかけて、主人公が真実を探し回り取引を成功へ導こうとする展開は巧みだと思う。そして、結末に残る後味の悪さもまた、この小説を面白くしている。
 この作者「デイヴィッド・リス」は、「紙の迷宮」という作品でアメリカ探偵作家クラブの最優秀新人賞を受賞しているとのことだが、「紙の迷宮」という作品も機会を見つけて読んでみようと思う。