昼過ぎぐらいに起きて
朝だか昼だか分からないような食事をする
眠い目をこすらないですむようになった頃
別にこれといった物も持たないで
別にこれといった用事も持たないで
家を飛び出して
そんな一歩から
何気ない休日が始まる
住み慣れた街の目的のない散策
今日一日が非常に無駄になると
深呼吸しながら考える
そしてその考えはすぐに忘れる
いつも歩いている道
いつもの様に
いつもの方へ
いつもの靴で
歩き始める
いつもよりゆっくりと
いつもはしない深呼吸をしてから
アスファルトの熱
手を触れてみようか
そんな考えをしてみる
その熱さには驚かされるだろう
そして飛び上がってしまうかも知れない
そんなことを考えてみると
跳ぶように走ってみたくなる
いつもの靴は
きっと知らない
僕が飛び上がるときの感触
それを与えてみたくなる
登り坂と下り坂
ここまで来ていつもの様に歩く気はしない
でも全力疾走するほど元気でもない
だからいつものように登ってみる
だけど坂は
いつもよりも緩やかで
いつもよりも短い
そしていつものように下ってみる
だけど坂は
いつもよりも急激で
誰かに押されているのかと思う
いつも見慣れた駅前
いつも見慣れた商店街
いつもの本屋で
いつものように
片っ端から本を眺めていく
面白そうな本だと
感じるだけ感じて
財布の中身と相談して
買わずに出ていく
買えずに出ていく
何気ない今日に
物足りなさを感じて電車に乗る
突然の思いつきで
ちぐはぐな時間
電車を待つホームで
何もせずぼーっと
向かいのホームを眺める
ゆっくりとやってくる電車
いつもよりも待った気がしない
そんな心情に改めて気づく
いつも乗っている電車の中は
いつもの速度でゆっくり走る
いつもは遅いと苛立っているけど
今日はなぜだかのんびりと進む電車が心地よい
そして
いつものようにぐらぐら揺れる
いつもは気持ちが悪いけど
今日はなぜだかゆらゆらと進む電車が快い
それからのんびりと
電車の中で回る扇風機を見ている
いつも駆け足で乗り換える連絡駅
人は程良く少なくて
駆け足というにはほど遠い
一本電車を逃すくらい
のんびりとした歩調で
乗り換える
乗り換えた電車の中で考える
さて、どこへ行こうか
そして今更ながら再認識
途中下車の気ままな
定期券の便利良さ
そうこうする内に
市の中心部に電車がたどり着く
今日初めてのような急な決断を迫られる
市の中心部で降りるか
隣の都市までこのまま行くか
決断をしたと言うか何となく
自分の足の動くまま
この駅で降りる
いつもと言う程いつもじゃないけど
いつも歩いている町を
またいつもの様に歩く
しかし
家の側とは程遠く雑踏の中
休日という日は人混みでまみれ
ここまで来て
安息を奪われたような気分になる
けれど
その気分を打ち消すような心情を
また再認識する
そして
雑踏の中をのんびりと進み出す
人混みは様々の顔を
僕の目に映す
昨日を振り返る間も無い程の多忙な顔
今日を楽しんでいるという感じの笑顔
明日が来るのを嫌がる様に今日を楽しむ顔
いつも見るという顔じゃない
他人の中にいる自分を
今更ながらに思って
いつもの町に来ているのに
遠くへ来たような感じを受ける
それから
いつもの顔を見つける
その瞬間はまさに偶然で
自分を中を
誰かが駆け抜けたように感じる
その誰かが目の前にいる
いつもの町で
いつも会うように
いつも通りに声をかける
しかし
今はまさに偶然で
いつもと言う言葉が似合わない
突然の出来事に
数歩引いてしまうような自分の
態度に気づいてしまう
それから
いつもの様に
いつも通りに
時間を過ごす
そんなつもり
しかし
帰り道の記憶はほとんどないまま
落ち着きという物を
取り戻したのは
何気ない平日の日
そして
何気ない平日が始まる
その平日は何気ないけど
いつも通りの平日とは少し異なる
そんな平日だと感じる
そして
そんな平日がまた
いつも通りの平日に変わる
だけど
何気ない平日を過ごす
何気ない休日の
何気ないドラマを
少しづつ
挟み込みながら