この本の中でも触れられているが、青色LEDの開発に成功した元日亜化学工業の中村修二氏が、正当な対価を求めて日亜化学工業を訴えたことは有名だ。科学者が研究に取り組み技術を進歩させるためには、それ相応の対価を支払うべきで、そうしなければ子供たちが科学の道に進まなく(理系離れが進み)なってしまう。このような警鐘を鳴らしていたことは、僕自身はよく知っていた。そのような内容を含めて、この本のテーマに関心を持ち、今回手にとってみた。
 理系というか、研究者がより良い研究(世界に先駆けた研究、社会に貢献できる研究などいろいろな意味で)を行うためには、どのような取り組みがなされているか、またはなされていないかが取り上げられている。それぞれ、興味深いテーマが多かった。理系が貢献に対して報われていないという日本の現状がよくわかった。そのようなテーマの中で異色という感じがしたのが、理系の「恋愛力」というテーマ。このテーマでは理系の男性が、女性と接する機会が少なく恋愛下手な人が多いということが扱われていた。具体的なケースも取り上げられており、なるほど確かにと感じた。が、残念ながらこの本には、「だからどうすればよいのか?」というところまでは触れられていなく、ちょっと残念。
 その他、この本の中で取り上げられている理系カルチャーのテーマの中で倫理の話に触れられている。七三一部隊・和田心臓移植・地下鉄サリン事件などは、理系の技術力が好ましくない方向に利用されてしまっているケースだ。七三一部隊については正直余り知らなかったので、この機会に調べてみた。調べれば調べるほど、目をそらしたくなる事実であることがわかった。理系とか文系とか言う問題ではなく、このような事をきちんと知らなかった自分が恥ずかしいなと感じた。