君の名残を(下)
上巻から引き続き読み進めて、一気に読んでしまった。この物語は平家物語をベースとして創作小説だが、下巻では時代が変化する場面が、次々に描かれる。平氏と源氏の戦いから鎌倉時代の幕開けという日本史で学ぶ展開である。そして現代からタイムスリップした2人は、その展開を知っている。
僕が(そして、タイムスリップした2人の登場人物も)、次の展開を知っている物語でありながら、次を読み進めたくなり、一気に読み切ってしまったのは、歴史上の人物が生き生きと臨場感溢れる形で描かれていたからではないかと感じる。タイムスリップというミステリアスな側面を除いた純粋な歴史小説と考えて読んでも十分に楽しめる小説だと、僕は思う。リアリティを求める歴史小説ファンには物足りないかも知れない、臨場感があって読みやすい作品である反面として。