「弘海 息子が海に還る朝」に引き続いて、市川拓司氏の作品を読みたくなったので購入して読んでみた。この作品は映画「恋愛寫眞 College of Our Life」のノベライズということだが、いつもの彼の作品と同じ雰囲気がある。物語の展開から、ある程度結末は予想できるし、読み終わった感じも期待通りと思える。
 主人公「誠人」の不器用さと、少女の姿をした「静流」の物語。静流は少女の姿をしてはいるが、できの悪い弟(=誠人)をもった姉のような振る舞いを見せる。写真撮影に関しては、誠人は静流の先生役。どちらがどちらについて行くわけでもなく、そんな恋愛関係。普通と言えば普通の会話が交わされているが、そこにちょっと不思議な現象がある。
 彼の作品は、ワン・パターンなのかもしれないけれど、期待に応えてくれる、読みたい物語が読めるという意味でもある。そして、現にまた、彼の作品を読みたいと思っている僕が居る。