荒削りだが勢いがあって面白い作品というのが、読み終わった第一の印象。西暦3000年の世界の設定で、王様の思いつきで、全国の「佐藤」さんを追いかけ回して皆殺しにするという虐殺計画−リアル鬼ごっこ−が実行される。突拍子もない設定と、リアル鬼ごっこで追いかけ回される迫力とスピード感から目が離せない。とても面白い作品だと思う。
 ただ冒頭にも書いたとおり、荒削りだという印象は強い。特に感じたのは、西暦3000年という設定を置いているにもかかわらず、主人公が生活している環境があまりにも現在と差がなく違和感があること。と言うよりも、未来という設定を置くことにほとんど意味が無いように感じた。
 解説にもあるがこの作品が自費出版という世界から登場したこと、作者もほとんど作品を読まないということ。これがまだ荒削りでありながら世の中に出てきた理由。近頃は、秘密本(サザエさんの秘密、ドラえもんの秘密のようなあら探しの本)が流行した影響もあり、出版業界には完成度優先が傾向が強いような印象を受ける。一読者としては、荒削りでも面白い作品を読みたいと素直に思う。荒削りだが、この作品は純粋に面白いと思う。