優良企業と言われることの多い「花王」。他の企業と比較して、花王がどのように異なるのかということは、僕自身ほとんど知らなかった。最近では「へルシア緑茶」のような独創的な商品の開発力があると言うイメージが強い。しかしこの本では、商品の開発力ではなく流通コラボレーション戦略、小売業との連携を花王の強さ・特徴として取り上げている。
 花王が取り扱うような雑貨を販売するためには、小売業が(雑貨以外の食料品なども含めて)良い売り場を作らなければならない。消費者が、雑貨のみを求めてスーパーなどに来ることはあまり無いので、他の売り場も含めて活気がなければならない。よって、小売業の売り場作りを花王が一緒になって取り組む必要がある。そのような考え方に基づいて、花王が積極的に小売業をサポートしていく姿がこの本に描かれている。特に、小売業との結びつきを強くするための販社制度の特色が強調されている。
 そもそも花王が販社制度を採用した理由は適正価格を守るためという事だが、消費者の目にはメーカーのエゴにしか写らない。花王の販社制度が成功している理由は、消費者に近づくという意味で小売業をサポートすることができたからなのではないだろうかと言う感想を持った。この本では販社制度をとっているということが強調されているが、単に販社を持つだけではメーカー都合の価格操作の道具となるだけで、消費者の利益や企業の発展には繋がらないと思う。情報システムなどをうまく活用した小売業のサポートにここまで力を入れることができた理由は、販社制度ではなく顧客視点をしっかり持った経営ができていたことではないかな。という印象を持った。