セイコーエプソンという会社。セイコーと言えば時計、エプソンと言えばプリンタと言うイメージがある。時計とプリンタには密接な関係があることを、この本を読んで始めて知った。エプソンのプリンタ事業は、東京オリンピックで計測したタイムを紙にプリントアウトする為の機会の製造から開始していると言うこと。なるほど、時計のセイコーからプリンタの会社が生まれたのか。これは、僕にとって新鮮な知識。
 このプリンタ事業だが、セイコーではクオーツの技術による時計のビジネスが成功した直後に着手されることになる。しかもクオーツの技術・ビジネスの中心となった人物が、成功した(成功が約束されている)事業から飛び出して、わざわざリスクが高く、将来性の見えないプリンタ事業に取り組んでいく。この本では、主にこの取り組みを通じて、エプソンのらしさを説明しようとしている。この本では、そのらしさを「挑戦」と「共生」と言う言葉で表している。新しいビジネスや技術にチャレンジしていき、開発した技術は公開して他の企業と切磋琢磨してより良いものにしていく企業文化である。
 このような本を読んでいると、新しいビジネスへの取り組みに積極的な企業というのは活力があって面白いなと感じる。これがエプソンの企業文化ということではなく、東京オリンピック以降という高度経済成長と言う時代背景と、エプソンという会社がまだまだ若いという理由もあるかも知れない。しかし、そのような環境で働くことができれば楽しいだろうなと、うらやましい感じがする。もちろん、自由に取り組めるということは、そうとうきつい仕事が待っていると言うことでもあるのだとは思うけれど。