CRMの実践方法について考え方から示されている本。何故CRMが重要か、顧客の順位付け、顧客への働きかけ、インセンティブについてから構成されている。CRMの基本的な考え方がわかりやすくまとまっていて読みやすい本だと思う。実践方法についても、これだけで取り組めるとはいえないものの、取り組みの考え方がきちんと書かれているという印象を受けた。
 CRMの重要さについては、企業がマス・マーケティングからワン・トゥ・ワン・マーケティングへ移行する必要があること、そしてそれを実現するためにCRMが必要であるということが述べられている。どうしてワン・トゥ・ワン・マーケティングが必要なのかというと、売り手市場から買い手市場へと変化しているという理由だけでなく、顧客のライフスタイルが多様化しているという側面もあることを指摘している。同じ年齢・性別であっても購買傾向は、「個」人によって全く変わってきているので、それに合わせたマーケティングを実施する必要があるということ。上位顧客を特別扱いするというのは「えこひいき」という感じがするが、上位3割の顧客が7割の売り上げを占めており、さらに上位顧客は利益率の高い商品を購入する傾向もあるということ。上位顧客に焦点を当てることは企業としては当然、そして上位顧客のニーズに対応していくことで企業の「個」性が育成されるという側面もあるということ。この本で明示的に書かれていた訳ではないが、顧客が企業を育てるという側面は興味深い。
 顧客情報の収集について、例えば「子供がいるか」「共働きか」などを顧客に尋ねても、あまり意味が無いということ。顧客の状況は常に変化するという面もあるし、「子供の居る両親」と「孫の居る祖父母」はマーケティング上は同じ対応が必要かもしれない。そこでこのような情報を顧客に尋ねるのはやめて、購入する曜日や時間帯で共働きか否かを判断、過去に子供向けの商品を購入したかどうかで判断をする。ここは素直に「なるほど」と感じた。その判断方法が100%正確かというと必ずしもそうとは言えないけれど、分析を行うための情報としては十分だと思う。この本にも書かれていたが、DBを作ることが目的となっては本末転倒で、何を分析する必要があるかを考えて集める情報を決めるということは大変重要なことだと思う。