十代はじめの若者が恋を経験し始める2つの物語。「こうばしい日々」はダイという少年がクラスメートの女の子と恋をして、「綿菓子」は姉の元ボーイフレンドに恋をして。若い頃はこんな風に恋いに憧れ素敵な気持ちでいられたよね、というのが素直な感想だと思う、実際。ちなみに僕は現在20代、この本が出版された年から考えると、おそらく著者がこの作品を書いたのも20代ではないだろうか。こう考えてみると、これは20代くらいの人間の恋に対する見方の一つなのではないだろうかと思う。若い頃は恋にもっと必死になれたと、ちょっと醒めた感じで回想する。その見方を代表するように「こうばしい日々」には、ちょっと醒めた感じのダイの姉があらわれる(大学生なので10代後半かもしれないけど)。
 そんな風に素敵な気持ちだったと回想できるのも、20代くらいの人間の特権かもしれない。その当事者(といっても10数年前の自分なんだけど)は素敵だなんて思えなくて、単純にいっぱいいっぱいなだけなんじゃないかなと思う。実際には歳をとって、それが素敵なことだったと回想できる余裕ができただけの話で。もっと歳をとったら、恋についてどんな見方になるんだろうか。そんなことを考えてみるのも面白い。