「千葉」と名乗る人間の姿をした死神と、これから死んでいく人間との物語。全6話で構成されていて、それぞれは独立した物語で、キャラクターものの小説。読み終わった最初の感想は、死神が出てくるような話にも関わらず爽やかな感じだな、というもの。主人公の死神は、割り当てられた人間が死に値するか否かを判定するのが仕事。人間の事には関心が無い、何を考えているかわからないと言いながらも、担当する(判定対象の)人間に深入りして行く。最終的には人を死に追いやるのだが、憎めない死神。
 6つの話に登場する人間はみんなどこか弱い部分を持っていて、人間離れした、ちょっとずれている(というか死神なのだが)「千葉」とコミュニケーションをしながら、自分が気づいていなかったその弱い部分に気づく。主人公の死神は、人間の死に際に、最後の幸せを感じさせようとは思っていないが、死に行く人間達は何かを悟ったような感じを見せる。でも、そこにいるのは人の死に慣れ過ぎている冷めた死神。
 読み終わって改めて見直してみると、この物語は人の死を考えさせる様な作品ではなく、生きている人を描いている作品だと思う。生と死は裏返しなのだけれど、これから死ぬというのに、人間がみな生き生きと描かれている。