なんて読みやすいビジネス書なのだろう、というのが第一の感想。「戦略的思考」について入門から始まり、企業や公共分野への適用までを取り扱う本書だが、そのはじまりは東京から伊勢志摩へ出かけることの価値について分析から。東京から伊勢志摩まで出かけるパックツアーで、移動時間、睡眠時間、現地で活動できる時間などがどれくらいかを調べる。現地で活動できる時間をどれだけか把握した上で、そのパックツアーの価格と並べてみる。そのようにして分解して考えた場合に、そのパックツアーの価格が妥当か、参加する人にとって価値ある物であるか、を改めて考えてみようということ。そして、企業や公共における戦略的思考についても同じことで、事実を分析・調査した上で、それぞれの戦略案が妥当であるかどうかを検討することで妥当性と説得力のある戦略を立案することができる。ということが、本書の概略。
 本書は、企業戦略という一見難しそうなテーマを取り扱ってはいるが、先に示したような展開で説明がなされていることもあり非常に読みやすいという印象を受けた。難しい言葉を並べ立てることもなく、平易な言葉でロジカルに説明が展開されていく。本の厚みも分厚いものでもなく、平易な言葉で書かれているが、内容を読んで考えられる部分も多い。今回はさらりと読んでしまった感じだが、じっくりと考えながら読めば、また良い味のある本ではないかなとも感じた。