しばらく読んでいなかった市川拓司氏の作品を読んでみた。「いま、会いにゆきます」「そのときは彼によろしく」と同じ雰囲気の作品で、期待通り読み進めることができた。ふと思ったことだが彼の作品では共通して、はじめから結末が明確になっている上で読者に物語を読ませている。そのことが、読者にとって期待通りという満足感を与えているのかなと思った。
 「いま、会いにゆきます」では妻が家族からかけてしまい、この作品では息子が家族からかけてしまう。作品中でも表現されているが、息子が巣立つという意味合いを含んでいるため、「いま、会いにゆきます」のように悲しさを感じさせるような作品ではない。強引な言葉で表すと、この作品の方が比較的に前向きで、力強い印象を受ける作品のように思える。