以前呼んだ「最新流通業界の動向とカラクリがよーくわかる本」とは、ずいぶんと違う本だという印象を持った。もちろん取り上げられている企業は、イオン、ダイエー、セブンイレブン、ドン・キホーテ、ファーストリテイリング、ヤマダ電機など同様の顔ぶれ。ただこの本では背景・歴史・現在の状況に加えて、これからの流通業界の目指す方向の考察が記されている。著者の言葉で言えば「流通ジャパン・スタンダード」だ。簡単にまとめると、ウォルマートなどのグローバル・スタンダードの手法を、日本人という世界一目の肥えた消費者を相手に商品を販売するこの国に上手くカスタマイズさせて適用させて、今度はそれを武器に世界に出て戦っていくということ。
 この本では、その「流通ジャパン・スタンダード」の布石となるような販売手法が取り上げられている。「デパ地下」のように常にトレンドに乗った商品を取り扱う業態、ドン・キホーテのように卸を上手く活用して面白い商品をかき集めてくる業態、一人暮らし世帯の増加に対応する「中食」の業態など。(「中食」とは弁当などを購入して自宅に持ち帰って食べること。それに対して、「外食」はレストランなどで食事すること、「内食」は自宅で調理してたべること。)
 以上のような点がこの本で取り上げられていて、ITについてはそれほど重きを置いていないような印象を受けた。重きを置いていないと言うよりも、大前提なのでページを割いていないのかな、という印象も受けた。