楽に読めるミステリーの作品集。主人公は十九歳のマコトで、その物語の展開の中には必ず池袋のストリートにいるガキたちが登場する。それに加えて、「エキサイタブルボーイ」ではヤクザが、「サインシャイン通り内戦」では池袋警察署長までが登場する。そんな登場人物の広がりに対して、あくまでメインの舞台は池袋。この作品では、池袋が犯罪にまみれた街(たとえば一時代前のニューヨーク)のようにも描かれているし、平凡な都市のようにも描かれていて面白い。解説にも少し書いてあったが、池袋という街は新宿や渋谷に対して、良くも悪くも地味な印象の街だと思う。ハードボイルド小説の舞台には当たり前な新宿ではなく池袋を選んだ作者のセンスが、この小説には確かに生きていると思う。
 この作品は主人公の一人称で描かれているのだが、主人公が何かに対して感想を抱いた際に一言付け加える部分が、読んでいて違和感を感じた。その違和感で、主人公が独り言のように物事を考えている様子が(読者に)伝わってきているのだろうと思う。