ヘッセの著作を最近よく読んでいるが、一番訳の分からない作品だった。しかしながらなんだか伝わってくるものがある。解説にあったが、この作品がヘッセの前期と後期の分かれ目になるらしく、この作品は今まで読んだ「車輪の下」「メルヒェン」等と少し違う感じがした。
 ところで、デミアンという謎の少年がシンクレールの元に何かあるごとに現れる、この現象は読み終えた今となるとすべてシンクレールの空想だったのではないかと感じられる。しかしデミアンが空想の人物だと考えると、シンクレールという少年は実はすべてのことを自分自身で解決して生きて行く立派な人物という事になる。人は他人に影響されて生きて行く、自分自身が作り出した他人の影響がこんなにも大きなものなのだとは考えにくい様な気がする。しかし余りにもデミアンは空想的な人物でありすぎると思う。