DeNAの横浜ベイスターズ買収のタイミングで球団の立て直しなどの話題が多くなってきたので、この本も読んでみることにした。この本は、ビリー・ビーンと言うGMがアスレチックスというチームを、数々の統計情報を元にして入団させる選手を選ぶことで、低予算ながら勝てるチームを作っていくというストーリーだ。ビリービーン自身は、その身体能力をスカウトに評価されメジャーリーガーになるが結果を出せずに終わってしまう、そのような背景から身体能力をみてメジャーリーガーを選ぶというのは正しくないのではないか? という疑問に答える形で統計情報を利用して入団させる選手を選ぶという球団運営を試みるようになる。メジャーリーガーでの失脚と、その失脚からGMとして才能を発揮するというストーリーは読んでいて興味深いものだと思う。
 この本のメインテーマは科学的な分析に基づいた判断の強さを語ることだと思われる。身体能力を見てメジャーリーガーを選ぶというやり方では必ずしも強いチームにはならない、統計情報を利用して身体能力が高くなくても勝てる野球ができる選手を選ぶことで低予算でも勝つ野球ができるということ。また、メジャーリーグのような古く変化を恐れる組織は、アスレチックスが勝っているという事実をみても旧来のやり方を変えずに、単に運が良かったという見方しかできないということ。こういったテーマの視点はとても面白いのだが、感想として、この本を読んでもわかっている人にしか伝わらないだろうな、という印象を持った気持ち悪さがあった。
 この本を最後まで読んでみてもう一つ感じたのは「それでメジャーリーグは面白くなったのか?」ということ。プロの野球はショービジネスでもあると思うので、見る人を楽しませなければならない。そういった視点でも科学的な分析を生かせれば、もっと興味深く読むことができただろうなという感想を持った。