書店でよく売れている本のコーナーで発見、著者が自分と同じ名字ということもあって気になり読んでみた。本をモチーフにしたミステリー小説ですいすいと読み進めることが出来た。登場する本は、夏目漱石「それから」、小山清「落穂拾ひ・聖アンデルセン」、ヴィグノグラードフ・クジミン「論理学入門」、太宰治「晩年」の四つ。これらの作品ごとに短編集の形で、各作品の古書が関連した謎が登場する。それらの謎を、ビブリア古書堂のオーナーの栞子が解き明かしていく様子を、主人公の大輔の一人称視点で記されている、シャーロックホームズのような形式で記されている。
 それぞれの短編に登場する人物が個性的で読んでいて飽きないなという印象を受けた。特にヴィグノグラードフ・クジミン「論理学入門」の短編に登場する紳士的な夫と、人なつっこい妻という正反対の性格のやりとりなどは楽しく読むことができた。また、取り上げている本が文芸作品ばかりではなく論理学入門という違うタッチの本が入っている辺りがアクセントになっていて心地よいなと感じた。
 すらすら読める本を読んだ後などは、特にもっと本を読みたいと思うのだが、本をモチーフとした作品ということもありもっと本を読みたいという思いを強くした。