「偸盗」は兄弟愛と、男をだます女の末についてといった所だろう。各人間のドラマが複雑に絡み合っている点で面白いけれど、取っつきにくい面もあったと思う。「地獄変」の、娘を焼かれる結末は予想される物だったけれど、その後の良秀の行動は予想しにくい物で、その心理は考えさせられた。「竜」は、正直ありきたりと言った感じで面白くなかった。「往生絵巻」は、戯曲風に書かれていて読みにくかった。戯曲の形ある意味書き易そうに感じた。「藪の中」は、証言という書かれ方が非常に面白く読み進めやすかった。しかし結末が解らないのは、物足りない感じがした。しかし、解らないのが良いのだという感じもした。「六の宮の姫君」は、悲劇的な話だという感じのみで、それ以上に感じる物は少なかった。芥川龍之介の作品は、文体が読みにくいのであまり読もうと思わなかったが、また機会を見つけて読もうと思った。