随分と昔のことになるが、先輩がこんなことを言っていた。


「芸術は学問になるとその輝きを失う」


一時期、漫画を学問として扱う(研究する)ことが話題になった。
そのような世間の風潮に対する言葉だ。


なるほど、
確かに芸術というものは、
正統とされるものから外れているぐらいの方が勢いがある。
そして、正統派から外れている芸術こそが新しい時代・芸術を形作る。


そう考えると、
芸術らしい芸術ではない、芸術を育てていくことが必要だと感じる。
僕自身が書く小説も、もっと枠から外れたものの方が良いのでは?、と思う。


だけど、僕の好きな芸術は、
基本を抑えた上で、枠から外れた芸術。


たとえば、読んでみると順当な小説っぽいけれど、
どこか、何かが枠からはみ出しているような小説。
うーん、あれっ?という違和感をくれる小説。


「芸術は学問になるとその輝きを失う」
ふと、その言葉を思い出した時、
僕は、そんな感じの芸術が好きだな。そんな風に思った。


地に足を付けた上での外れ方が、そんな芸術が安心できて気持ちがいい。