サイバーエージェント社長の藤田晋氏と、一橋大学教授の米倉誠一郎氏が対談形式で、起業について話を進めている本。藤田氏がサイバーエージェントを起業、株式公開、ネットバブルの崩壊などの流れ中でどのように考え、どのように行動してきたかが語られている。この本の冒頭で記されている藤田氏の言葉「こっちに来てみろよ。そんな川の向こうにいないで、こっちに来たら? こっちの川岸はまだすかすかなんだよ」は、とても実感のこもった言葉だと思う。これは、ネット業界が競争が激しく、新規参入する余地がないように考えている一橋大学の学生達に、言った言葉。未だにネット業界は、ドッグイヤーと言われて、次から次へと新しいものが生まれてくる事が続いている。またまだやることはいっぱいある。それが、藤田氏の実感なのだろうという想像をした。
 この本では、藤田氏がサイバーエージェントという会社をどのように考え、運営しているかを自らの言葉で語っている。そういう意味では客観性が無いのかも知れないが、なるほどと思える事が多かった。サイバーエージェントという会社は、新興企業なのだが、離職者が少ないというか、終身雇用に近い考え方をしている。これは、ネットの広告代理店というビジネスのノウハウを持った人が、外に流出してしまうことを将来の損失と考えているから。直近の利益だけを考えず、将来的な事も考えている。
 また、藤田氏がこの本の中で、何度もサイバーエージェントが地味な会社だと言っている。確かに、ソフトバンク、楽天、ライブドアなどと比較すると地味な印象はある。良いこととも悪い事とも思わないが、僕は、これらの起業のトップの中では、藤田氏にもっとも共感を覚える。僕自身、地味な事は好きなので。