日本全国の百貨店の状況についての調査、それぞれの百貨店は今後どのような戦略をとっていけばよいのかという著者からの提言がまとめられている本。全国という名の通り、東京新宿、横浜、神戸、福岡、京都、名古屋、札幌という主要都市と、宇都宮、広島・福山、新潟、大分・熊本、松山などの地方都市まで様々な百貨店が取り上げられている。この本で取り上げられている各都市での、百貨店の競争が行われている様子を読んでいるだけでも楽しい。東京新宿や神戸などは、よく知っている都市はその様子を知った上で、あまり知らない都市の事情についても「へぇ」と言う感じでいろいろな百貨店事情を読むことできて興味深かった。
 この本でもよく取り上げられているJRグループと呉服系百貨店との連携の状況は、特に興味深い。JR東海名古屋駅では高島屋、JR西日本京都駅では伊勢丹、JR北海道札幌駅では大丸というように主要ターミナル駅に大型の百貨店が次々とオープンしている。また、それぞれがそれなりに成功しているという現実がある。周辺の百貨店にどのような影響を与えたのかについては各地でバラバラなのだが、阪急に代表される私鉄が自前(や、子会社)で百貨店を経営しているのに対してJRグループの対応は興味深い。この本が出版された2003年時点では私鉄のやり方よりもJRのやり方の方が吉と出ているようだが、これからこの戦略の違いによってどのような変化がでてくるのかは目が離せない。