結論から言えばよくわからない内容の本だったと思う。村上龍、保坂和志、村上春樹、阿部和重、舞城王太郎、いしいしんじ、水村美苗などの作品を題材に現代小説、エンターテイメント小説についての考察が述べられている本である。特にこれと言った結論があるわけでもなく、小説の見方が延々と述べられているような印象を受けた。個々の見方はそれぞれ面白く、また題材として取り上げられている小説も興味深いので読んでみたくなる。
 この本で述べられている考察の中で最も印象に残ったのは、『日本語は「ペラい」』という解説の部分。この本の冒頭に、小説独特の内省や描写がかったるい、そのかったるさを消去した上で、なお存在させるスキルがエンターテイメント小説に求められる。という、主張が述べられている。そのかったるさを形作るの原因の一つが日本語の「ペラさ」であると考える事が出来る。日本語は恐ろしく表層的なので、一つの言葉をたくさんの助詞や助動詞などでトートロジカルに修飾することになる。例えば、「感謝する」を「心から、本当に、大変厚く、感謝申し上げます」と表現するように。これがかったるさに繋がる一因と考える事が出来る。内省のかったるさは少し異なる側面もあるとは思われるが、文章を作る上で、日本語の「ペラさ」ゆえのかったるさに気をつけると言うのは、いろいろと意識してみるのが面白いのではないかと感じた。